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身体操法学習上の禁止事項


初めてこのブログにお立ち寄り頂いた方には、前書からご覧いただくことをお勧めします。

身体操法の学習には、基本的に複雑な学習資材や器材は不要ですし、運動場などの広い場所・専門の設備も不要です。八卦掌(中国武術の一流派)では、1頭の牛が寝るスペーがあれば十分に練習できるといい、その狭さを強調しています。また、どこまで真実かは定かではありませんが、中国武術の古い名拳士/郭雲深が、牢獄において3年間手かせ足かせをされた状態で、一つの動作を練り続けたという有名な逸話があるほどです。学習にお金のかからない身体操法ですが、深い内容が一見するとシンプルな動作の中に込められているため、正しい方法で学習することは非常に重要です。今回は、学習を進める上での、次の注意事項について説明します。

◇呼吸を意識的にコントロールしない。自然に呼吸する。
◇体が痛いのに練習を続けない。身体のどこかが痛んだら練習を止める
◇精神疲労時に無理して練習しない。意識的な動作に集中できない時は、集中できるまで休む
◇競争しない

今思いつく重要な点はこれくらいです。順に説明を加えたいと思います。
◇呼吸を意識的にコントロールしない。自然に呼吸する。
呼吸をするとお腹や胸が膨らんだりへこんだりするので、この動作の時は吸った方が動き易い、或いは、吐いた方が動きやすいということは確かにあります。ですが、緊張の取れた状態でいれば、ベストの呼吸のタイミングは身体が自然に計ってくれますのでわざわざ意識する必要はありません。ただでさえ、意識しにくい動作を学習しようとしているわけですから、呼吸に気を使うのは練習の妨げとなります。
また、いわゆるハァハァと「息をつく」状態になってもいけません。その理由の一つは、息苦しくなると、求める動作に意識が集中できないからです。もう一つは、身体操法が目標とする動作(運動)は、いわゆる一般的な運動(スポーツ)が求めるものが違うことに起因しています。息苦しくなるところまで身体を追いつめる運動では、その分だけ肺機能や心臓に負荷がかかり疲労しますが、人の身体は、疲労から回復した時には、以前よりも少しだけ大きな負荷に耐えられるように器官が発達する機能があります。つまり、呼吸の場合、肺活量が上がるとか、心臓が一回のポンピングで送り出せる血流量が増えるということです。一方、身体操法では、そういうことを目標としていません。できるだけ少ない呼吸量で、全身に均等で十分な酸素と栄養を送り込める身体作りを目指しています。運動量が低い状態でありながら、身体が心地よくぽかぽか温まってきたとしたら、それが望んでいる状態ということです。逆に、精神的なストレスによる頭部への血流の集中や、局部筋肉への偏った負荷による血流の滞りは、忌み嫌うところとなります。

近年ある科学者が呼吸と寿命の関連について、非常に興味深い論文を発表しています。哺乳類の最大寿命は、人間なら120歳くらい、象ならおよそ70歳、ハツカねずみならば3年という具合に、種によって決まっています。それでは、何によってその最大寿命が決まるのでしょうか。研究によると、哺乳類ならばどの動物も、一生の間に心臓が約20億回、呼吸は5億回行なうことが判明しています。そして、一方で、心臓が打つ時間の間隔を、ネズミ、ネコ、イヌ、ウマ、ゾウで測り、体重を計測して、各々の動物の体重と時間との相関性を計測すると、時間は体重の1/4乗に比例している事が解明されました。つまり、体重が増えると心臓が打つ時間の間隔が長くなるのです。酸素は生命活動に必須の要素ですが、同時に老化に関係している活性酸素はこの呼吸と寿命に深く関係しているのかもしれなません。

つまり、呼吸をするとは、生きるのに不可欠な行為でありながら、イコール、活性酸素で身体を老化させているともいえるわけです。一生の心拍回数や呼吸回数の上限も決まっているわけです。身体操法では、むやみに残りの回数を減らすような運動を目標としていません。

ところで、理屈ではわかっているものの、苦しくなれば運動ではないと感じる方も少なくないでしょう。私もその口でした。私は、入門して二年目の夏に老師との待ち合わせまでの時間がくるまで、ひなたで基本練習を行っていました。北京の緯度は、日本の秋田県くらいですが、5月から9月末までの間、30度から40度を前後する気候となり、結構暑いものです。しかし、元来日本では高校球児からサッカー少年にはじまり、焼けた鉄板のような真夏のグラウンドでの練習は、つらくはあるけれど、さして違和感はないものです。。むしろ、練習の時に好んで日陰を選んでは、なんだか軟弱な気がしました。、暑い中でも運動し続けられる体に鍛え上げるべきたと考えて、敢えてひなたで練習していたのです。
老師は私を見つけると、今後はできる限りひなたを避けて練習するように言い渡しました。この高い気温のなか、しかもひなたで練習を続けたら、当然大量の汗をかく。体中の血液も水分を失い粘度が高まる。粘度が高まれば、それを押し出す心臓の負担も非常に大きくなる。「八卦掌で鍛えたいのはこれではないんだ。わかったか?」とおっしゃっいました。私はその時は、分かったんだか、分かっていないんだか、よく分からなかったのですが、どういうわけか妙に納得してしまい。それからは好んでひなたで練習することを止めました。今では老師が言わんとしたことがよく理解できます。
また、そんな練習で本当に身体が丈夫になるのかと思う方もあるかもしれません。AとBの基本モチーフでは、Bが身体全体の調整と回復の機能を持つと説明しました。(「進化の反面」ご参照)。その観点からすれば、身体操法とは、Bが一番働きやすい状況下での運動(=新陳代謝が活性化している状態)と言うことができます。身体を回復させ、また丈夫にしたいのであれば、これほど好都合な状態はないといえるかもしれません。また、八卦掌では、この基本練習に、「易筋、易骨、易髄」の効果があると謳っています。この場合の「易」とは、「変化する」という意味を持ちます。従って、「易筋、易骨、易髄」とは、筋肉と骨と骨髄を健全化させることができるといっているわけです。筋肉や筋が太く丈夫になり、骨密度が上がり、髄も充実するといいます。易髄に至ると、骨髄が健康で良質な血液を作り出すので、当然全身が健康になります。全身が健康になると、自然と精神が旺盛になります。健康で元気になれば、当然力も湧くだろう。私が学んだ武術ではこういう風にいうわけです。苦しい運動を身体に強いなくとも、身体は丈夫になる。なんとなく、その理由がお分かり頂けたでしょうか。

◇身体のどこかが痛んだら練習を止める
どこかが痛んだら、練習の方法が間違っています。まずは、痛みが取れるまでその練習は止めてください。そして、また痛くならないよう練習方法を改める必要があります。自分で改善できない場合は、できる人に直してもらいましょう。ここでも、筋肉に負荷が感じられるから動作が正しいに違いないと安直に考えるのは禁物です。日頃使うことのなかったインナーマッスルに急激に負荷をかけることで、その部位を激しく損傷して激痛が起きる可能性もありますので十分注意が必要です。

◇意識的に動作に集中できない時は、集中できるまで休む
正しい動作ができてしまえば、むしろ何も考えずに、その動作を繰り返すことは大切になります。ですが、正しい動作が掴めていない時に、間違った動作を繰り返すと、疲れるだけで効果が上がらずせっかくかけた時間が無駄になります。もう一方で、線条体が間違った動作を習慣として記憶してしまうため、それ以降動作を改めるのが容易でなくなります。ある程度はしかたのないことですが、できるだけ注意するに越したことはありません。集中しづらい時の一時間の練習よりも、集中した状態での10分の練習の方がはるかに効果的です。特に、仕事や家事や子育てで時間を抽出するのが大変な方は、疲れているからこそ、短い時間でも構わないので、リラックスできる時間、精神が疲労していない時間に少しずつ学習を進めるべきです。

◇競争しない
これまでのどの項目も重要ですが、この「競争しない」ということも大変重要です。実は恥ずかしいのですが、自分は大変負けず嫌いです。だったら、負けないようにすればいいのですが、負けっぱなしの人生と言っていいくらい競争では負けてきました。それだけ負けたのだから、負けることに慣れればいいようなものですが、これが、いつまでたっても負けず嫌いで、同じ土俵で他の人と比較されるのが大嫌いです。比較されると練習する気をなくすほどです。私と違い、何をやっても飲み込みが早く、競争がプラスのモチベーションになる人は結構ですが、そうでない人は、少なくとも身体操法を学習する時だけは、自分と他人を比較するのを止めてください。「自分にはできない...どうしよう」とか、「自分だけ学習が遅いようだ...どうしよう」とか考えるでしょうが、そういうことが気になると、肝心の意識が目的の動作に集中できません。それに、身体操法で求める動作は、初めのうちは本当になかなか思ったとおりにできないものです。多くの人は今までに経験したことのないほど、ままならないと感じるでしょう。ですが、そのままならない部分が、超えるべき目標の壁なわけで、壁がどこにあるのか分からなかった状態からすれば、飛躍的な進歩であることを考えてください。
そして、競争/比較をしてはいけない理由は他にもあります。、「究極のパズル」で書いたとおり、身体操法修得は、学習者一人一人への大きな謎解きでもあります。そして、この謎は本人にしか解けません。本人にしか解けないそのしくみは、AとBのモチーフにあるとおりです。誰も肝心なBの説明をしてくれません。それに、AとBのモチーフにおいて、Cというメディアを確立させ、それを足場にAとBの協力状態を強固にしていくという順序は、誰にとっても同じですが、実際のところ、人はそれぞれA寄り(A意識の使用の方が得意)の人と、B寄りの人(B意識の使用の方が得意)とがあり、そのバランスや個性は一人一人異なります。動作の学習においても、理論を事細かに説明すると前に進める人、理論が分かれば前に進めるが、人から理論を説明されるのが嫌いな人、理論自体が嫌いで、体感を何よりも重視する人、など、それこそ千差万別です。また、身体操法で学ぶ動作は、見た目の動作の違いが非常に見えにくいものです。初めて見た跳び込みの試合で、素人目には、どれが高得点なのか判断できないのと似た理屈です。違いは確実に存在し、決定的な違いでありながら、外見上の違いは非常に小さい。つまりは、それだけ含意が多いので、たとえ動作の模倣という点において学習が遅いようでも、その意識的な部分の学習は進んでいるかもしれないわけで、誰が本当に学習が早く、誰が遅いのかということは簡単にはいえません。だから、自分で自分の学習進度を遅いと断定すること自体がナンセンスです。それに、身体操法の修得により獲得したいものは、健康であり、肉体と頭脳の能力開発です。今できないからといって、あせって簡単にあきらめるべきことではありません。修得できれば一生役に立つ能力なのですから、他人と競争しても仕方ありません。10年かかっても20年かかってもいい、着実に進歩している実感と、正しい方向性がみえたのであれば、ずっと後のことを見据えて、ゆっくりと、しかし確実に進めるよう向かい合うことをお勧めしまます。

また、逆説的ではありますが、身体操法は、初めにできない人の方が、学べる部分が多いことを意味します。ですから、目標までの到達時間が早いか遅いかは別問題で、いずれにしても最終的には目的にたどり着けるのであれば、問題の多かった人の方が、得るものが多くなります。自分だけできなければ、悔しがるよりも先に、どうして自分だけができないのか、他の人との違いを余計に考えるきっかけをその人だけ持っていることになります。中には、(おそらく1,000人に一人くらいは)余り悩まずに、さくさくと吸収できる人もいるでしょう。こういう人は、習わなくともAとBの協力点をしっかりと把握できているひとで、いわば、天才タイプです。しかし、残念ながら、こういう天才タイプの人は逆に、身体操法をあえて学んで修得できることは少ないでしょう。こればっかりは、どうしようもありません。修得の早い人が同じように得るものを増やしたいのであれば、できない人がなぜできないのか、どうして自分はそこまで苦労せずともできるのか、その理由を努力して考察する必要があるでしょう。身体操法の学習とはそうしたものです。

1 前書き
2 はじめに
【分類】 意識
【概要】 基本モチーフの説明
3 凧と凧糸 意識の操作と運動 
【分類】 意識
【概要】 企みが悩みになる意識の性質
4 光のしぼり 意識の性質
【分類】 意識
【概要】 二つの意識のメリットとデメリット
5 天才とは
【概要】 天才の性質を説明し、かつ、身体操法は天才でない人が学ぶための方法と説明
6 人間の進化の本当の意味
【分類】 進化
【概要】 企てたヒト 立ち止まって、動くのを止めて考えることを選んだ
7 身体操法で目標とする動作
【分類】 動作
【概要】 意識しなければいけないのに、意識すると難しくなるという矛盾
8 身体操法における動作要領
【分類】 動作
【概要】 具体的な動作要領
9 今の時代における身体操法の意義
【分類】 文化
【概要】 意識と行動を密着させる感覚を取り戻す手段としての身体操法
10 情報の整理
【分類】文化 
【概要】 普及しにくかった理由、時代を客観的に理解する
11 手作業の意味
【分類】 進化
【概要】 進化の流れから手作業の意味を解く
12 進化の反面
【分類】 進化
【概要】 ヒトの進化のデメリット
13 どうして健康になるのか
【分類】 健康
【概要】 身体操法と健康
14 究極のパズル
【分類】 パラダイム変換
【概要】 難しくて面白いパズルを例えにした説明
15 身体操法学習上の禁止事項
【分類】 練習容量
【概要】 具体的な練習方法に関して
16 AとBの性質の理解
【分類】 意識
【概要】  Bの性質の理解と活用法
17 師弟関係とは 身体操法の普遍性
【分類】 文化
【概要】 様々な分野での活用の可能性
18 パラダイム変換に関して
【分類】 パラダイム変換
【概要】 身体操法を通じて柔軟なパラダイム変換能力を身につける
19 姿勢と健康
【分類】 健康
【概要】 姿勢と健康



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